『日本の行事と食-春編-花二題』 講師:神崎 宣武 先生

日時:2014年4月8日(火)19:00開塾
会場:六本木/国際文化会館
講師:神崎 宣武 先生(日本民俗学者)

和塾 開塾10周年を記念した、本科特別授業、神崎宣武先生の『日本の行事と食』。
日本の季節の行事とその由来、その際に食べる食・お酒、を教えていただきます。
「和食」のユネスコ無形文化財の登録 立役者、「無形文化遺産特別委員会」の委員長もされていた神崎先生をお招きしてのひとときです。第一弾は春の行事と食、を「花二題」とつけてご講演いただきました。

以降 7月2日(水)・10月11日(土)に夏と秋のお稽古を開催します。
あわせて、チェック!してくださいませ。

[※以下、当日参加された塾生の方から提供いただいた文章を掲載いたします※]

先日は、和塾ではお馴染み、博覧強記のダンディズム、神崎宣武先生のお稽古でした。

「この部屋は、暑いですね。失礼して、上着を脱がせていただきます。そういえば、落語で、こういう所作、ありますよね。何気無く羽織を脱ぐシーン。あれって、何の意味があるか知ってますか? あ、はい。枕が終わった合図、そうですか。 え? 本題に入りますの記し? うん。 学者はね、そうやって難しく考えようとする、説明しようとする。今日は、もっと気楽に考えて行きましょうよ。日本人は、もっといいかげんで、素敵なんですね。

時計なんかなかった時代にですね、寄席のスケジュール管理をどうしたか、という話なんです。高座にあがって、世間話をはじめる、タイミングをみて、羽織をポイとやる。そして本題に入る。弟子がそれを回収に来る。普通ならね。でも、次の演者がまだ来てない非常事態には、いつまでも、羽織が舞台に放置されるのです。つまり羽織が舞台上にある限り、延々と場を繋げなくちゃいけない。のんだくれて来ないことで有名な落語家がいたりなんかして。でも、当時はそういう、ひたすら時間を伸ばす芸もちゃんとあったんですね。そんなのも、みんなで楽しんだ。今では時計がありますからね。そんな芸も廃れてしまいましたが。でも、いいかげんで、そして素敵だったんですね。

さて、今日は、4月8日、何の日か、ご存知ですか? あ、お手元のプリントに書いてありますね。お釈迦様が生まれた日です。日本では、浄土宗が、積極的に、花まつりというお祝いをするんですね。浄土真宗も、日蓮宗も、やりません。世界的にみても、やってませんね。インドでも、中国でも、御釈迦様を、ましてや、その誕生の話を誰も知らない。大抵、一つの時代が終わると、前の時代の文化を地に埋めて、ないものにしまうんですね。かの人たちは。

ところで御釈迦様が生まれた時、九尾の龍王が、誕生を祝って、御釈迦様の頭に甘露、めでたいあめを流したと言われているんですね。

それを再現して、祝うのが、花まつりなんです。花で飾った祭壇、ツツジやシャクナゲで飾った花御堂の中央には、生まれたばかりの御釈迦様が立っておられる。その頭から、甘露ならぬ、甘茶をかけるんです。みんなで。子供も大人も。

日本人が、面白いのは、本来、相手の誕生のお祝いをしてるのにもかかわらず、何か自分にも、いい事があることを期待するんですね。おかしいでしょ。現世利益をもとめるんですね。実際、花まつりに参加すると、いいことがある。

砂糖なんかなかった当時、甘茶は、とても大きな楽しみだった。みんなでお釈迦様にかけた甘茶は、浴仏盆にたまって、あとで、それをみんなで飲むんです。

今日は、世話人の本間さんが、浅草にいって、本物の甘茶をもらって来てくださいました。皆さんで飲んでみましょう。甘茶という名前のユキノシタ科の植物です。薬草ですね。それをお茶にした。砂糖は使ってないのに、こんなに甘い。少し苦いけれど。うーん、今はお寺で、すこしは砂糖入れてるのかな?」

などといった風情で、先生のお話は続きます。

花見は、本来、ただ花を見て騒ぐものではなく、山にいって、桜がほころびはじめるのを確認し、ああ、そろそろ雪も溶け出して、水量を増す頃だ、稲作の準備を始めなくちゃ、知らせてくれて、感謝感謝。ほんらいは、花見ではなく、花観なんです。花を観て判断することが、主眼。なんというか、占いに近い感覚なんですね。そして山の神を、田に導いてくる役割もある。そのためにお酒をのんで祝いをするのが本来の花見だった。それが、だんだんと、江戸時代後期、今のような、どんちゃん騒ぎの形に至る経緯があるんですね。

その途上で現れた、煮しめと言う料理。
上流階級がやり始めた派手な花見を、だんだんと庶民もできるようになって来た。その当時、煮しめが持つその意味合い、その味わいを知ってほしいと、先生が懇意にされている料理人の方が作られた、煮しめを、先生を囲み、日本酒を飲みながらみんなで味わいました。

なんと贅沢な時間の過ごし方なんだろうと、改めて和塾に感謝。

先生、ありがとうございました。
その後の二次会では、また、とっておきのお話。ここでは言えないようなお話。

みなさんも、一度、どうですか?

塾生。