日時:2013年8月31日(土)14:00開塾
会場:渋谷/数寄屋 金田中
講師:鴨治 欽吾 先生(東京鴨治床山株式会社)
At today’s Wajuku… we enjoyed a lecture by Tokoyama(Kabuki’s wig stylists), Mr. Kingo Kamoji !
今日の先生は、東京鴨治床山株式会社社長、鴨治欽吾さん。
「床山(とこやま)」とは、整髪されたかつらを、歌舞伎の役とそれを演じる俳優さんの体型に合わせて結い上げ、また舞台当日は頭(あたま— 歌舞伎のかつらのこと)の掛け外し・メンテナンスなども行う仕事です。業界の間では「とこやまさん」と呼ばれています。歌舞伎の床山は立役(男役)と女方で担当が分かれていて、鴨治さんは主に立役を担当されます。
公演数ヶ月前から俳優さんやかつら屋さんと打ち合わせし、役柄を巧みに手と櫛で表現していく、
お話を聴けば聴くほど、職人技と芸術センスがシビアに要求される、舞台の重要な部分を担うお仕事です。
歌舞伎では女形の髪型で100種類程、立役はその数倍あるとのこと。
[三階から名題まで、『山』のようなあらゆる役に対して、歌舞伎の歴史とともに昇華されていった記号性をしっかりご自身の技にし、ひとりひとりの役の頭に結い上げるのが「髪結い『床』」。床・山さんです。]
さらに髪型で、役柄の身分、性格、心情、置かれた環境(落ちぶれたり)まで表現するので、本当に繊細な心と技、十分な歌舞伎の理解が必要になります。
例えば忠臣蔵六段目の勘平は舅を殺してしまったと思い込んで切腹しますが、その頭は少しずつ崩れて幕切れ近くで、きれいにさばけなければならない。そのさばけ具合で、勘平の心情をいかに表現できるか。さばけるスピードも、床山さんは毎日舞台を袖からチェックし、より良いスピードでさばけるよう結いの加減を試行錯誤されるそうです。
ああ、ほんとに職人技。
ということで、和塾メンバーが、10月の歌舞伎座で片岡仁左衛門さんが使う、いがみの権太の頭を掛けさせて頂き、さばいてみることになりました!
写真のように(上一番下、左)、もっといの部分に栓がついていて、これを抜くと、、、ざんばら髪になります!
な〜るほど〜。。。良くよく考えられている。。。
このような結い方も含めて、髪型はすべて口伝で伝えられてきたもので、鴨治さんも少しでも次の世代に伝えるために、現在は写真に残すようにされているとのことでした。
そして、お稽古のなかで拝見した、鴨治さんの使われている柘植櫛。こちらを使って髷を水油で固め、削っては整え磨いていらっしゃいます。硬い柘植が、50年の仕事を経て、髷の形にすり減っていました!
歌舞伎舞台というのは、表に立つ俳優さんだけでなく、本当に多くのプロフェッショナルによって、創られ、また時代を超えて継いでこられているんだなあと感動した一日でした。[※当日参加された塾生の方の声を元にテキストを掲載]