日時:2013年4月24日(火)19:00開塾
会場::六本木 国際文化会館
講師:浦上満 先生
今回の和塾では、浦上蒼穹堂主人・浦上満さんに「北斎」についてのお話を伺いました。美術商であり、「北斎漫画」の収集家でもありますが、北斎漫画の世界一のコレクションを持っていると言われています。北斎漫画の魅力についてはもちろん、北斎美人画、そして北斎春画について教えていただきました。
最初は骨董の余談もして下さいました。「骨董ですと、皆さんは掘り出し話が大好です。」と言います。「これから蚤の市に行きますので、掘り出しのコツ教えてください。」とかよく聞かれるらしいです。「そんな話はあるわけないです。」と浦上さんは言います。「いいものにはいい値段がつくのです。掘り出そうと思ったら、堀り出される」。実際に、偽物を売っている骨董屋いますからね。そうすると、「偽物を売る人も悪いですが、買う人も悪いです。」という意見を持っていらっいます。大切なのは信頼できるようなところでものを買うことだそうです。例えば、北斎漫画の場合は、浦上さんのところですね(笑)。
さて、北斎とは?「北斎(1760年~?)は世界で一番有名な日本人画家だったと言っても過言ではないでしょう。」と浦上さんは紹介します。代表作とされる『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」はモナリザと並べるくらい有名な作品で、北斎は世界的評価を受けました。印象派やジャポニズムに大きな影響を与えました。90歳まで長生きをしていたため、多くの作品を残しています。
一方、もう一つの代表作だと言われているのは「北斎漫画」です。名前はよく聞きますが、実態は知らない場合が多いです。その「北斎漫画」は浦上さんは40年にわたり約1400冊を集めてきました。しかし、一体何ぜこんなにたくさん集めたのでしょうか?「版画は複数芸術ですので、できるだけ摺りが早くて(初摺り)、保存状態がいいものを追い求めて、もっといいのがあると常に思い、現在まで続いている。」と話しています。
江戸時代当時に「北斎漫画」は大変なベストセッラーで、15編が出版されていますが、それらが65年にわたって何回も摺られてきたので、その中もまた様々なバーショーンができてきました。紙も最初の方は厚いですが、だんだん薄くなるそうです。比べると、やはり初摺りの質の方がずっと良いそうです。また面白いのは、現在最も状態がいいものの三分の一が海外から出ているということです。それほど外国人に人気があったということと、外国人が版画をとても大事にしていたということです。一方、日本ではピンからきりまでものがありますが、江戸時代には、貸本屋さんが600軒以上あり、一般庶民はそこで「北斎漫画」などを借りたりしていたため、保存状態がよくなくて、ぼろぼろな場合が多いそうです。また、虫食いがあるもの多くて、なかなかいい状態のものを見つけるのは難しいそうです。例えば、シーボルトは文政6年(1823年)に来日し、一番最初に「北斎漫画」を10編まで集め、海外に持ち出したのですが、保存状態がものすごくいいです。しかし、浦上さんはさらに古いのを見せて下さいました。「北斎漫画」の初編が出版されるのは文化11年(1814年)です。ここで面白いのは、最後のページを見ると、版元が名古屋となっています。あれ?江戸ではない?実は、北斎が1812年に弟子のところで半年間過ごしたと言われ、そこで「北斎漫画」のスケッチを造ったそうです。しかも、15編を作るつもりでもなく、元々一冊だけを予定していました。そうすると、古い場合、初摺りの1編には「1編」と書いていないのです。なるほど、「北斎漫画」を買おうとする際に、注目すべき点の一つだと思いました。
[記:Fabienne Helfenberger]