『藍染め〜工房を訪ねます』講師:藤澤幸宏 先生

日時:9月14日(土)14時~16時
会場:墨田区京島/藤澤工房
講師:すみだマイスター 藤澤幸宏 先生

重陽が過ぎ、もうすぐ仲秋。

藍染体験に行ってきました!
今回は藍染体験として、藍染ハンカチを作りました。

先生は、藤澤工房の藤澤幸宏さん。
(『長板中形』という江戸中期に始まった手染めの伝統技法を受け継がれている方で、
この技法は墨田区の無形文化財に認定されています。)

蓼藍の花は、秋の季語ですね。
歳時を知り、旬の命を感じながら文化に触れるぜいたく。
本日もとても貴重な体験でした。

体験を通じて強く感じたのが、【藍の生命力】と【職人の凄味】でした。

【藍の生命力】

藍の最大生産地である(今も?)徳島県(阿波の国)から、
藍の葉を発酵・熟成させた藍玉を取り寄せ、それを二次発酵させて藍染に使う。
生きているから、写真のようにぶくぶくしている。ぶくぶくを見ていると白洲正子さんの言葉を思い出します。

”瓶の中でふつふつと発酵している藍を見ていると、早く染めてほしい、色になりたい、
とつぶやいているようで、可愛らしいというか、人間味があるというか、
素人目にも妙に親身なものを感じるのである。”

あと、草木染であるが人間国宝 志村ふくみさんの言葉だ。

”生命力の尖端で染まるのです。”

”花の命を私は頂いているのですね。
本当は花が咲くことが自然なのに私が横取りするのだから、織物の上に花が咲いてほしい。”

藍は生きている、命を息吹を感じながら染めた。

藍染ハンカチづくりは、
各塾生が思い思いに出来上がりの状態を想像しながら、
ハンカチを輪ゴムでしばった後、
藍につけるという、とても簡単な工程だ。

だが、その簡単な工程を通じて、
藍が放つにおい、そしてぶくぶくとした藍の息づかいから、
藍が生きていることを十分に実感できるし、
時間が経つにつれて、藍に浸けたハンカチ模様が次第に変わって、
はじめに想像していた以上のものが出来上がっていくのを見ると、
化学染料にはない温もり、自然なものはコントロールできない、
ものなんだと実感することができる。

また、藍染はその時の人間の心模様が出て、面白く奥深い。
同じものはこの世にふたつなく、大げさだが生き様が出るのがいい。

本来、衣服を仕立てる・選ぶ・着るという前提には、
「自然の感触」や「自然への感謝」がある。
藍染体験は、単に自分専用のハンカチができるだけではない、
大げさに言うならば、人間と自然との共生を思い起こさせてくれるものでした。

【職人の凄味】

『長板中形』手染め伝統技法に関して、
藤澤さんが実践するのを拝見するのみであったが凄かった。

長板中形とは、生地に型紙を置き、糊をつけ、型付けを行っていき、
それを生地の表と裏まったく同じ柄にする方法だ。

表裏で、ずれないようにするのが職人の技だ。
ひとつの反物を作るのに250回の型付けを行い、それぞれ0.1mm~0.5mm単位の調整を行うそうだ。

しかも使用する糊は、季節・気候の変化、模様柄(型)に応じて、
ぬかや塩の量を調合するという。(模様柄は5,000枚以上保有されていた)

ちなみに、この糊の塗られたところが防染剤となって、
それ以外の部分が藍色に染まる。

藤澤さんの話を聞き、実際に塗られている姿を拝見していると、
凄まじく鍛練された技術に圧倒された。あっという間に、美しい柄が浮かび上がってくるのだ。

だが、20代の頃は本当に苦労されたらしく、お得意先を失ったこともあったという。
圧倒的な技術の裏には、職人としての意気地を感じた。
美しさの奥には、血反吐を吐く体験がある。
伝統文化の職人さんに出会うだびに思うことだ。すごかったです。

藤澤さん、貴重な体験をありがとうございました。

伝統芸能も良いですが、伝統技法や職人を通じて、
100年以上続いている生活文化に触れることで、
日本が培ってきたものの息づかいが具体的に聞こえてくる。
もっともっと触れて、日本的なものと向き合っていきたいと思った一日でした。