日時:2009年11月18日(水) P.M.7:00開塾
場所:六本木 はん居
Text by miyaben
投扇興は面白いです。
広げた扇子を投げ、的に当てるだけのゲームです。
およそ飛ばされるなんて予想もしていなかった扇子ですが、じつにいい仕事をするのです。
本来の役割以外でいい仕事するなんて、本当に扇子とは気だてのいいやつです。
座敷の空気をはらんでふわりと滑空する扇子は、まるで紙飛行機。なんでまた人はこんなことを思いつくのでしょう。
前説中の荒井修先生。
「投扇興は江戸時代、十代将軍家治の頃、京都のお公家さんが始めました」
今回の講師をお願いしたのは、荒井修先生。
本職は浅草の扇専門店「文扇堂」の四代目店主ですが、江戸の文化についての博覧強記、話し出すと次から次へと爆笑エピソードが出てきます。ちなみに近著は、集英社新書の『江戸のセンス』。いとうせいこうさんと共著です。
修先生。粋なオヤジですね。
「その頃のお公家さんは暇がある。だから酒を飲んで、寝て、また酒を飲んで、寝て。そんなあるとき自分の箱枕に一匹の蝶が留まっているのに気がつきました。そこで持っている扇子を投げてみたら、見事に飛んだんですね。それから宮中で爆発的に人気が出ました」
そこから投扇興の的の箱を「枕」、その上の可愛らしい物体を「蝶」と呼ぶそうです。納得。
さて実際にやってみましょう。
的から広げた扇の幅4枚分のところに座布団を敷き、対戦者が座ります。
扇の持ち方。手の甲に載せ、要に親指を添えます。
さいころを投げて、先行後行を決め、扇子を飛ばします。
体は前傾させて、支える親指と扇の中央の骨の先端を結ぶ線上に目を凝らして、狙いを定めます。
上手くいくと、扇はいったん畳ぎりぎりまで高度を下げますが、枕の手前でぐっと機首を上げ、蝶に当たります。
「力んでいる人はダメですね。風に乗せるくらいの力の入れ具合でちょうどいいんですよ」
修先生の投扇。こんな感じに投じます。
そして的の倒れ方、扇子の散り方で点数を競うのですが、その姿は「源氏五十四帖」の名前がつけられています。
たとえば扇の要の下に蝶が隠れて「鈴虫」。鈴虫が虫かごに入っているよう。七点。
地紙に蝶が乗って「夕顔」。夕顔の君が扇子の上に夕顔の花を乗せて光源氏に差し出した挿話から見立てているそうです。五点。
先生いわく、江戸のデザイン文化は何かに見立てる「見立ての文化」なのだそうです。
得点控え。見立ての一覧です。
そして、塾生の投扇。当たってますよ。
盛り上がりましたな。楽しかった。
この遊びはお年寄りでも子どもでも女性でもハンデなし。誰でもできるお座敷遊びなのです。
修先生のお話しです。
江戸のセンス -職人の遊びと洒落心 (集英社新書)
荒井 修 / 集英社
おまけ:アフター飲み会の修さん。
で、これは、羽裏(修さんの羽織の裏地)お宝です。