ー甲冑〜戦闘に美をー三浦公法先生 第十三回混合クラス 

日時:2010年7月21日(火) P.M.7:00開塾
場所:赤坂 金龍

Text by kuroinu
正式な?甲冑師。五月人形のようなものではなく、すべてを伝統的工法に則って作製する本物の甲冑師は日本にあと数名しか残存していません。三浦公法先生はその一人。絶滅危惧の希少種です。
三浦先生は、例えば平安期の国宝大鎧を素材・製法とも当時のままで再生できる。ご希望の方は、ぜひご発注ください。一領(甲冑一揃え)3000万円〜8000万円になります。よろしくどうぞ!

三浦公法先生

日本の甲冑は工芸技術の集積。そこには、本当にたくさんの伝統的工芸技術、匠の技が詰まっています。金工・鋳金・錬金・漆芸・木工・染色・組紐・革工・縫製・・・・。これほどの技能を集積する工芸品はちょっとない。日本工芸の総合芸術と称しても過言ではないものなのです。なんとしても後世に伝えたい伝統文化。和塾で何が出来るか、考えてみたいところです。

さて、甲冑の歴史やその構造については、三浦先生による前回のお稽古 → 第54回お稽古の記事をご覧いただくこととして、今回は塾生による試着の次第を少し詳しくお伝えしましょう。

今回試着のモデルをお願いしたのは、竹添大晃塾生。戦うビジネスマンではありますが、甲冑はもちろん初体験。競合プレゼンは何度も経験済みですが、合戦の経験はございません。

では、まず「草鞋」から。甲冑というと「鎧・兜(ヨロイ・カブト)」ですが、足元を疎かにしてはなりません。これで戦場を走っていたのですよ。今や、草鞋の付け方を知っている日本人もいなくなりましたがね。

草鞋を履いたら次は「脛当」ですね。縫い込まれた鉄板が膝下を守ります。

その上は「佩楯(はいだて)」膝鎧ともいう。太もも周辺をカバーするパーツです。埴輪についているのを見たことがありますよね。つまり、古墳時代には既に存在した防具です。
三浦先生が手に持っているのがその佩楯。ちなみに、後ろに立っているのは、アンドリュー・マンカベリさん。三浦先生のお弟子さんです。アメリカの人。

佩楯を身につけるとこんな感じになります。

次はいよいよ「胴」の着用です。胴には下腹を守る「草摺(くさずり)」がついている。右側が開口する観音開きの状態で、まず左手を差し入れ、右の脇下で前後をつなぎます。

なんとなくカタチになってきたの図。

引き続き腕の守りに入ります。「筒籠手」は文字通り筒状のもの。腕を中に差し入れて使います。腕部は鎖で編み込まれています。

顔の防御は「面頬(めんぼう)」で。鼻の部分は脱着可能。鼻水拭いたり、痒くて我慢の出来ない時も大丈夫。髭は威嚇のための装飾です。

で、その面頬を顔に付けるとこんな感じ。

最後は頭部の防御ですね。「兜」を頭に。勝ち虫=トンボの前立てが美しい。前立ては金属に見えますが、木製。金の箔を貼ってあります。純粋な装飾。戦闘にも美を求める日本の心でしょうか。

兜は組紐の緒で面頬と結びつけます。勝って兜の緒を締めよ、ですね。

最後は、腰紐を回して太刀を結わえます。これでできあがり。

立派な武将が塾生の面前に屹立しております。竹添の大将の御成です。

試着を快く引き受けてくれた竹添さん。ありがとうございます。お疲れさまでした。
妙に安心感がある、という感想が良かった。実際に身につけてみなければ出てこない見解ですね。甲冑の心理的効果を実感。物理的な防御力以上に、この心理的効果が、白兵戦の現場ではとても重要だったのだと思います。

三浦先生、アンディさん、楽しくかつためになるお稽古、ありがとうございました。