日時:2010年7月13日(火) P.M.7:00開塾
場所:銀座くのや 座敷
Text by kuroinu
洋装では到達し得ない究極のオシャレ。それが日本のキモノなのですね。
7月最初のお稽古は、男子塾生のための和装のお稽古「男きものの始め方」です。講師は、きものディレクターとして活躍中の黒柳聡子先生。1999年「全日本装いのコンテスト」準女王です。
黒柳聡子先生
聡子先生によると、着物のコーディネートには3つの原則がある。コーディネートを支える3つのバランスの問題です。「格のバランス」「色柄素材のバランス」「まわりとのバランス」。格のバランスがもっとも難解ですね。公式な場での和装=正装なのか、準正装なのか、日常的場に見合う和装なのか、私的で砕けた装いなのか・・・、といったことですか。それぞれに適切な着物があって、それが着物の格を構成する。これは、その着物の価格の問題ではありません。私的で日常的な場に即した着物にもとんでもなく高価なものはある。一方で、正装としての着物にも、結婚式場の貸衣装のような安価なものもあるのです。格の話しは価格の話しとは異なる。それがちょっとややこしいところです。
初心者にはそんな難しい話しより、基本の事柄。「おとこ着物」に必要なものを順に確認していきましょう。
まずは着物。和装の本体ですね。素材は、原則的には絹ですが、木綿や麻、ウールもある。ポリエステルやキュプラなどの化繊のものもあります。概ね10月から5月頃までは裏地のある合わせの着物。9月と6月が裏地のない単衣(ひとえ)。7月8月は絽とか紗の薄物。
この着物の下に着るのが襦袢・長襦袢。外観上は衿と袖口だけが見える。素材はやはり絹が基本ですが、夏場の麻襦袢や冬場のウール素材などもあります。
さらにその下に肌着があります。肌襦袢と褌(ふんどし)が正式ですが、イマ時はまあ、パンツにランニングシャツでもよろしい。冬場はステテコなどもあります。
着物にはもちろん帯が必要です。角帯と兵児帯(へこおび)。外出時は角帯で。襦袢にも男締めと呼ばれる腰紐が必要です。
着物の上に着るのが羽織。着物と同素材でつくります。羽裏と呼ばれる裏地があり、羽織紐で前を留めます。
羽裏と襦袢というのは、上記の通り外観上は見えない部分ですね。脱がない限り露出しない。ところが、この見えない部分に凝るのが日本的な美意識だったりする。で、これが凝り出すとキリがない。着物より高額な襦袢とか、額裏という一枚布で柄を仕込んだ羽織とか。初心者には余談ですが。
この他に、男の着物=和装にはもちろん足袋と履き物が必要ですね。足袋はやはり白足袋が基本。他に紺足袋や色足袋も。履き物は、下駄・雪駄・草履の3種。中では、草履の格が一番上。公式な場に下駄で出掛けてはいけません。雪駄は畳表が原則。草履は表裏とも革でできてます。
加えて、袋物や夏場の扇子など、所謂和装小物が少々必要になる。
以上が「おとこ着物」に必要なものであります。やはり和装はいろいろとタイヘンなようですね。
考えてみると、例えば、はじめてスーツを購入する場合。背広の上下だけでは済まないものです。ワイシャツとネクタイは必須。ズボンにはベルトもあった方が良い。スーツを着るなら革靴も必要で、それに見合った靴下なども。ついでに鞄などもスーツに合ったものが必要になりますよね。
つまり、初めての和装にはその関連アイテムを一通り揃える必要があって、ためにどうしても最初のハードルが高くなるのです。ですから、最初の一揃えを通過すればその後はずっと楽になる。塾生諸氏におかれては、ここらでその最初のハードルを飛び越えて、男きものを始める年頃なのではないかと思う次第ですが、いかがでしょう。
ところで、着物の格の話し。簡単な見分け方があります。着物(羽織)にある紋の数で見分けるのがその方法。無紋・ひとつ紋・三つ紋・五つ紋。紋数が多いほど格が上がる。三つ紋に下駄というのはあり得ないバランスということです。
ぼちぼち着物でもつくってみるかと思い始めたところで、今回のお稽古も終了です。聡子先生、ありがとうございました。
塾生用の「男きもの始めてセット」頒布会、近日中に開催いたしますのでお楽しみに。