満を持しての凱旋公演「平成中村座」。昨年のNY公演を成功させた勘九郎・七之助兄弟が、亡き勘三郎の遺志を継いで、所縁の地・浅草にて旗を揚げた話題の舞台。江戸の芝居小屋を現代に蘇らせるその公演は、歌舞伎を楽しむまさしく格好の機会。浅草寺の境内に芝居小屋を仮設し、小屋のまわりには江戸小物を商う五軒長屋を配置。お茶子たちが見物客を案内し、履物を脱いで小屋に上がる。貴賤を問わず多くの人々が芝居を楽しんだ、昔々の歌舞伎見物の息吹ををたっぷりと楽しめるまたとない機会です。
和塾四月の芝居茶屋企画は、その平成中村座鑑賞会。ただ歌舞伎の舞台を見るだけではなく、旨飯・旨酒を贅沢に楽しみ、歌舞伎噺に花を咲かせ、特等席で舞台を観る。それが和塾だけの芝居茶屋企画ですから、会はまず、浅草いちばんの料亭「草津亭」で始まります。
淺草田圃「草津亭」
草津亭のお料理は、「青柳と春山菜黄身酢がけ・花山葵、うるい菜、独活、蕨、土佐酢のジュレ、ラレシ」の先付から。お造りは鯛、焼き物は桜鱒と稚鮎、煮物は穴子蒸し、揚げ物は蛍烏賊東寺揚げと芝海老真薯揚げ。竹の子御飯のお食事で締めて、水菓子は紫芋のムースです。美味至極。
お食事の後は、これも芝居茶屋企画恒例の歌舞伎噺。お招きしたのは、塚田圭一先生です。
歌舞伎噺は塚田圭一先生
平成中村座といえば、塚田先生。平成12年の最初の公演から、実行委員長としてすべてを統括されていた先生ですから、中村座観劇前のお話しなら、この人をおいて他にはない。先生だけが知っている秘密のお話しが次々飛び出す、たいへん貴重な講演でした。お話しの後半は、これから観る演目の見所解説。今回の公演の最後を飾る演目「幡随院長兵衛」のイヤホンガイドはその塚田先生がご担当。生(ナマ)の解説とイヤホンガイドで、二度ためになるまことに贅沢な歌舞伎噺でありました。
塚田先生のお話を堪能した一行は、草津亭を後に歩いて中村座へ。いよいよの芝居見物です。
大賑わいの平成中村座
和塾席は上手最前列
話題の中村座、今回も切符は入手困難。良席はまさしくプラチナチケットなのですが、和塾はもちろん特等席を確保。総勢30名が、最前列を含む舞台前を占拠しての見物となりました。幡随院長兵衛では、客席から登場する長兵衛=橋之助さんが和塾席の真っ只中で立ち止まる。またとない贅沢な瞬間でしたね。
勘九郎の愛息・七緒八(なおや・三歳)の歌舞伎舞台での初御披露目となる女形[妹背山婦女庭訓・三笠山御殿での豆腐買娘役]もかぶりつきで堪能。今回もまた、最高峰の和文化体験をたっぷりとお楽しみいただく和塾の芝居茶屋でありました。