text by kuroinu
レストランで窓際の席を希望する。実はこれ、日本人特有のことなのだそうで。神崎先生のお話し、今回もまた目から鱗の連続です。
シリーズでお送りする神崎宣武先生の特別講義「神崎特講」。七月の今回は、夏の日本を学びます。
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和塾・神崎宣武特別講義
日時:7月2日(水)19時~21時
会場:六本木 国際文化会館セミナールーム
講師:民俗学者 神崎宣武 先生
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そもそも、日本の四季は以下を基準に分かたれます。即ち、立冬・立秋・立夏・立春。それぞれ前日を節分(季節の分かれ目)とし、その前18日間を土用とした。節分が春で、土用は夏、という認識ではよろしくない。土用も節分も年に四回あるのです。
そして、この土用と節分、つまり季節の変わり目は体調にも変化が現れますから、食養生が必要になります。夏の土用に滋養豊富な鰻を食するのはそうしたワケがあるのです。もうひとつ。この季節の変わり目に必要なのが「お祓い」。夏越の祓(なごしのはらえ)で茅の輪をくぐるのは、手が切れるほど鋭い枝を持つ茅の力で、季節の分かれ目に、罪や穢れや悪霊を祓うということなのです。季節を殊の外大切に考え、感じながら生きる日本人ならではの行事なのですね。
拾遺和歌集に「題しらず」「よみ人知らず」として、「水無月のなごしの祓する人はちとせの命のぶというふなり」という歌があるように、夏越の祓の歴史は長い。けれど、今では、その称すら知らぬ人が増えています。暮らしの中に季節を取り戻して、節目節目の行事を楽しむ、豊かな日々をも取り戻したいものです。
ちなみに、冒頭の窓際を希望する日本人。その理由も、私たちのDNAにインプットされた、常に自然を愛で、自然と共に暮らそうとする日本人らしい行いなのです。
神崎特講では、毎回振る舞われる酒と肴も楽しみのひとつ。今回は、先生が高津川から取り寄せた天然の「うるか」が参加者に。ひとつは、天然鮎の「はらわた」だけを、塩でじっくり2年もねかせた生地うるか(にがうるか)。苦味・渋味・旨味の三拍子そろった「本物のうるか」の濃厚な味。クセになりそうでした。もうひとつは、鮎の卵を塩漬けにした子うるか。酒の肴としてはもちろん、温かいご飯の上にのせて食べるてみたくなる絶品の珍味でした。神崎先生、今回もまた、頭もお腹もいっぱいになる特別講義、ありがとうございました。