「自然は芸術の極致、美の最高である。」
生涯を通じて自然美礼賛を貫き、その凄まじい美意識をもって、総合芸術の極みを体現した北大路魯山人。
和塾では魯山人と所縁の深い方々とともに、その美意識を現代に再現し、多くの皆さまにご体験いただくべく、北大路魯山人 美食の宴を開催いたしました。
会場は、魯山人が長期逗留し、器や書画など多くの作品を寄贈した、紀尾井町福田家。当時より今に至るまで、川端康成、イサム・ノグチ、高村光太郎をはじめとする多くの文化人や財界人の集う料亭として、その名を馳せています。
講話をいただいたのは、魯山人の膝の上で育ち、また魯山人の「大雅堂藝術店」および「美食倶楽部」の跡地に「魯卿あん」を構えた、黒田陶苑・魯卿あん主人の黒田草臣氏。福田家所蔵の素晴らしい魯山人作品を手にとりながら、「魯山人おじさん」の数々の秘話を楽しくお話いただきました。
人間味あふれる魯山人作品の数々を、ご参加の皆さまにも実際に手にとっていただきながら、黒田氏のお話を聞いたあとは、いよいよ魯山人の器を使用した、福田家の特別会席のお食事。
「食器は料理の着物である。・・・低級な食器に甘んじているものは、それだけの料理しかなしえない。この料理で育てられた人間は、またそれだけの人間しか生まれない。」と言った魯山人の美意識を感じながら、料理と器がぴたりとあてはまる美を、五感をもって体験いただきました。
刺身は瑞々しい色絵染付の鉢にひんやりと盛られ、煮物は志野菊文蓋付平向にほっこりと鎮座。生命力あふれる箸置きに箸先を触れさせながら、食すれば食するほど気力が充実するようなひととき。
涼やかな鈴虫の鳴き声に送られて、会場を後にするころには、すっかり自然美に心身ともに洗われたような気持ちになる、素敵な夏の一日でした。