さよなら東京𠮷兆本店〜また逢う日まで

2021年1月末。日本の料亭文化の最高峰「東京𠮷兆本店」が、この地での歴史にいったん幕を下ろしました。

世界に誇るべきその数寄の館も、花街にひっそり佇むその黒塀も、京都孤篷庵写しの茶の庭も、歴史的な見納め。和塾贔屓の名店でのひととき、最後の宴を開催しました。

東京𠮷兆本店は、𠮷兆創業者である湯木貞一が、戦後我が国最高峰のポジションを得た新橋花街に満を持して出店した畢生最大の館。両陛下はもとより皇族が一堂に会することまであるという、我が国の料理屋の頂点に君臨する存在です。数ある𠮷兆グループの中でも、唯一厳格な紹介制を守り、ここだけは贔屓顧客の紹介なければ予約を取ることもできません。

贅を尽くした館は、入り口の袖壁に掲げられた樂了入の鬼瓦や玄関三和土の奥に鎮座する仁阿弥道八のお多福さんから、襖の把手、釘隠し、欄間、床柱、天井板…、そのすべてが文化芸術の精髄を集めた逸品ばかり。東京𠮷兆本店を知ることは、日本の芸術文化を知ることで、この館での経験の有無は人生を変える時間でもある。東京𠮷兆本店を知らずして日本料理を日本文化を語ることなかれ、と和塾は言いたい。

 

東京𠮷兆の営業は場所を移していずれ再開するそうです。またそのときまで…