私は昭和23年(1948年)東京の下町、浅草で生まれ育ちました。
「すし、そば、てんぷら、うなぎ」は東京の四大郷土料理で、子どものころからそれらの料理に親しんできた私は、早稲田大学を卒業後、自分の「舌と胃袋」で「東京人」であることを確かめようと、東京発祥の「とんかつ、ラーメン」を加えて食べ歩きをはじめました。
そして、つまるところ「料理は、味より人」であることを確信した私は、昭和55年(1982年)「東京・味のグランプリ200」を上梓し、東京の優れた職人仕事にエールを送りました。
以来、40年以上にわたり、72歳のいまでも食べ歩きを続け、いまなお「食」の仕事に就いておりますが、「味」の職人仕事では、なにより「人間味」が一番大切であることを痛感しております。
この連載「人生充実、巡礼十皿」では、私に「美味しい革命」を与えてくれた十皿を取り上げ、その料理の歴史的文化的背景に分け入り、なおかつ、料理人の職人仕事の核心に迫り、「食」の仕事に就いた半生を振り返ってみたいと思います。どうぞ、最後までお付き合いをお願いいたします。
[連載一覧]山本益博・我が人生の十皿
・01 東京「たつみ亭」荒木保秀の「上かつ」
・02「みかわ是山居」早乙女哲哉のはしらのかき揚げ
・03 東麻布「野田岩」の筏の蒲焼
・04 銀座「すきやばし次郎」のこはだの握り
・05「吉い」吉井智恵一 鱧のお椀
・06 東京「コートドール」斉須政雄の「しそのスープ」
・07 気仙沼「福よし」村上健一のさんまと吉次の塩焼き
・08 柏「竹やぶ」阿部孝雄の そばがき
・09 三ノ輪「トイ・ボックス」山上貴典の醤油ラーメン
・10 京都「浜作」森川裕之の「鯛のお造り
・11 別皿 東京「HIDEMISUGINO」杉野英実の「ランブロワジー」