こんにちは。日本舞踊家の宇津木安来です。
今回は、「お酒を注ぐ」という振りの三つ目の秘訣、胸を落とす。
ということについてやっていきたいと思います。
胸を落とす、というのはどういうことでしょうか。
日本舞踊では、「胸が使えないと踊れない」「背中が使えないと踊れない」「腰ができていないと踊れない」といった教えがあり、この「胸が使えないと踊れない」の胸を使う、という教えの中の一つの在り方として、「胸を落とす」という技法が存在します。この教えや技法については、いわゆる暗黙知の部分なので、あまり明快に、このようにやるのだよ、という教えがあるわけではないのですが、その「胸を落とす」という技法の中の一つの身体と意識の使い方についてお話ししたいと思います。
このお酒を注ぐ振りの中で「胸を落とす」というのは、わかりやすいところですとお盃にお酒を注ぐときに行い、基本的には胸をまっすぐ真下に落とす、という意識が大事になってきます。
この胸を落とすという際に、まず一番ありがちなのは、肩を斜めにしてしまう、ということです。これだと、ちょっと日本舞踊初心者なのかなーという感じになってしまいます。
また、胸というのは解剖学的には肋骨の部分になりますが、胸を単純に傾けるだけ、ということになってしまっても、「胸を落とす」とは異なるものになってしまいます。
更に、全く胸を使わずに行うと、少し女らしさがなくなってしまいます。一方で男の役でお酒を注ぐ際には、胸は必要最低限の力で変形しないようにして使います。
では胸はどのようにして落とすのか、と言いますと、胸を落とす際には、基本的には背骨の両側で身体を割って、相手がいる方の身体を割り落とすような意識で、胸を落とすということを行います。また、どの程度胸を落とすのか、大きさを変えることもできます。
今回は、三つ目の秘訣、3.胸を落とす。でした。
これまで、「お酒を注ぐ」という振りを行う際に、大事にしていただきたい三つの秘訣について、 ご紹介させていただきました。いかがでしたでしょうか。次回も、どうぞお楽しみに。よろしくお願い致します。
(資料1:三つの秘訣)
[連載一覧]宇津木安来・日本舞踊の動く辞典
・00 はじめに
・01 お酒を注ぐ【はじめに】
・02 お酒を注ぐ【秘訣①:重みを感じる】
・03 お酒を注ぐ【秘訣②:重心を感じる】
・04 お酒を注ぐ【秘訣③:胸を落とす】