最高峰の和文化体験
2022.02.14
◆積み重ねる美 曖昧模糊な日本の芸能も、稽古となると少し様相が変わります。世阿弥が風姿花伝で語るように『稽古は強かれ』であります。繰り返し繰り返し続けられる稽古は、果てることがない。京舞もしかり、日本の芸道におけるこの反...
2021.12.20
◆曖昧模糊の美 見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ 二十五歳の藤原定家が、西行が奉納する「二見浦百首」に寄せた作品です。新古今和歌集にも採録され、『三夕の歌』として知られるこの和歌は、日本の中世の美意識を...
2021.11.15
◆寄り添う美 こうした互いを思いやる文化は、もちろん、京舞の内にも見事に発現しています。先人の芸を尊重し、流儀の型を継承し、次に続く人びとの思いを踏まえ、客席の心に寄り添う舞。八千代先生は語ります。「そういう思いというの...
2021.10.15
月夜や闇夜を台無しにするライトアップとか。浮かれ気味の京都は、あまり好きになれない気がします。けれど、それでも尚、京都は私たちを惹き付けて已みません。何度でも行きたくなる。美と傳來の藝術の何たるかを討ね究めやうとすれば是...
2021.09.03
◆翁のいる国―― 能の演目の中で唯一未来を描くものがあります。「翁」です。その成立は、遅くとも平安時代末期から鎌倉時代の初頭と考えられ、世阿弥による能の大成以前から、能の前身として演じられていた芸能です。 その初期形態は...
2021.08.04
◆文化の国―― 源次郎先生が最初に小鼓の手ほどきを受けたのは、お祖父さまから。とても厳しい師匠だったそうです。家でも正座を崩すことのない人。 「だらっとしているのを見たことがないですね。テレビでプロレス中継を見るときでさ...
2021.07.21
◆調和の国―― 紀州道成寺に伝わる安珍清姫伝説を素材とした能「道成寺」は、乱拍子と言われる小段で知られています。乱拍子は、シテによる特殊な舞事で、小鼓が独特の演奏を披瀝します。二十分ほどつづく小鼓の独奏。気迫を込めた掛け...
2021.06.29
翁を観るとシアワセな未来を感じます。 小鼓の打音と掛け声が、頭骨の中を貫きます。三間四方の小さな舞台が、永遠の時空を司る。 いったい、能のどこがどうなって、そんな幸福の感覚を運んでくるのか。不思議な民の、不思議な芸能が、...
2021.05.12
◆積み重ねる「良い器」―――― 世紀を越える積み重ねの上に、時代の個性を加える日本の創作は、高い洗練度をもっています。多くの先人たちの技と工夫を否定することなくすべて受け入れ、その上に自分の個性と時代の気分を載せていく。...
2021.04.03
◆すべてを「肯定する文化」―――― 平成の世の中は、数値化できる経済というものが最優先の価値観になってしまいました。お金を稼ぐことが人々の成功の基準になり、底が浅くとも新しく珍しいというだけのモノやコトが、社会の耳目を集...
2021.03.02
日本には自然の恵みに満たされた国土があります。 山があり、谷があり、川があり、海がある。それぞれに四季があり、一年を通じて幾千幾万通りの美が人々を取り囲んでいます。 人知を越えた綺麗に、日々接しながら暮らす人々には、謙虚...
2021.02.06
晴れた夜の星空の、星と星の間の、何かがあるようで何もない空間の色。その色を「漆黒」と呼びたいと思います。 漆黒とは、ウルシの黒のことで、その黒は、普通の黒とはちょっと違う。 谷崎潤一郎は言います。「漆器の肌は、幾重もの「...